【なぜPayPayは東証をスルー?】ナスダック上場・孫正義の「90%支配権キープ」戦略
【PayPay最前線】シリーズ vol.6
前回までの記事はこちらからどうぞや
【関連記事】
vol.1→PayPayを断るお店が増えた本当の理由
vol.2→PayPayが世界で使える日が来る?Visa提携で変わる海外利用
PayPayがナスダックに上場したニュース、vol.3でお伝えしました。
→【衝撃】PayPayがナスダック上場!1兆9000億円企業になった普通のユーザーに何が変わる?
そのとき私が一番気になったのは「なぜ日本の株式市場じゃないの?」という疑問でした。
PayPayって日本のサービスですよね?
なのになぜわざわざアメリカの市場に上場するの?
調べてみたら、そこには孫正義さんの「なるほど!」と思わず声が出るような戦略がありました。
東証とナスダックの決定的な違い
株式市場というのは、簡単に言うと「会社の株を売り買いできる場所」です。
日本には「東証(東京証券取引所)」があり、アメリカには「ナスダック」があります。
どちらも世界的に有名な市場ですが、上場するためのルールが全然違います。
| 東証(日本) | ナスダック(アメリカ) | |
|---|---|---|
| 浮動株の基準 | 30%以上必要 | 10%でOK |
| 規制の厳しさ | 厳しい | 比較的緩やか |
| 主な上場企業 | トヨタ・ソニーなど | Apple・Google・Amazonなど |
| 世界的な注目度 | 日本国内が中心 | 世界中の投資家が注目 |
ここで「浮動株」という言葉が出てきました。これが今回の核心です。
浮動株比率30% vs 10%がすべてを変える
「浮動株」とは「誰でも自由に売り買いできる株」のことです。
東証に上場するには、この浮動株が全体の30%以上必要です。
つまり東証に上場すると、会社の株を30%以上を市場に放出しなければなりません。
一方ナスダックは10%でOKです。
孫正義の「規制アービトラージ」作戦
今回PayPayが上場で売り出した株は、全体のたった10%だけです。
残りの90%はソフトバンクグループが持ち続けています。
これを表で見るとこうなります。
| 上場先 | 売り出した株 | 手元に残る株 | 経営の支配権 |
|---|---|---|---|
| 東証に上場した場合 | 30%以上 | 70%以下 | やや弱まる |
| ナスダックに上場(実際) | 10% | 90% | ほぼ完全に維持 |
「株を売り出しながら、会社の支配権はほぼ手放さない」という、いいとこ取りの作戦です。
これを専門用語で「規制アービトラージ」と言います。
難しい言葉ですが、要するに「ルールが自分に有利な場所を選んだ」ということです。
東証だと、知らない誰かに30%も口を出される可能性があるけれど、ナスダックなら10%だけで済む。
つまり『自分の城』をしっかり守れる場所を選んだんですね。
「孫さんの執念」を感じることができます。
同じことをアームでもやっていた
実はこれ、PayPayが初めてではありません。
ソフトバンクグループが持つ半導体設計会社「アーム(Arm)」も2023年にイギリスではなくナスダックに上場しています。
そのときもSBGは9割の株を手元に残しました。
つまり孫正義さんは「重要な会社はナスダックに上場して、支配権を維持しながら資金だけ調達する」という方法を確立しているわけです。
| 会社 | 上場年 | 上場先 | SBGの保有率 |
|---|---|---|---|
| アーム | 2023年 | ナスダック | 約90% |
| PayPay | 2026年 | ナスダック | 約90% |
でも東証も指をくわえて見ていたわけじゃなかった
「東証は日本企業上場を望んでいたと報道されていますが、孫正義氏はナスダックを選択」
実は東証は数年前からPayPayに「うちに上場してください」と働きかけていたそうです。
でも孫正義さんはそれを断り続けてナスダックを選びました。
これはある意味、日本の株式市場にとっては「痛い話」でもあります。
日本最大のキャッシュレス決済企業が、日本の市場ではなくアメリカの市場を選んだわけですから。
調達資金2,400億円の真の行方
ここが一番面白いところです。
ナスダック上場で調達した資金は、実はPayPayのサービス改善だけに使われるわけではありません。
孫正義さんはPayPay上場の直前に、エヌビディア(世界最大の半導体企業)とTモバイル(アメリカの携帯大手)の株を売却して100億ドル(約1.6兆円)を手に入れました。
その資金はオープンAI(ChatGPTを作った会社)など、AI関連企業への投資に集中させています。
つまりこういう流れです。
| ステップ | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| ① | エヌビディア・Tモバイルの株を売却 | 約1.6兆円 |
| ② | PayPayをナスダックに上場して資金調達 | 約2,400億円 |
| ③ | オープンAIなどAI企業に集中投資 | 兆円規模 |
PayPayの上場は「PayPayを世界に広めるため」だけでなく、「孫正義さんのAI帝国を作るための資金調達の一環」でもあるわけです。
私たちPayPayユーザーにとっては?
「孫正義さんの戦略はわかったけど、私には関係ある?」と思った方へ。
実はじわじわ関係あります。
ソフトバンクが90%の株を持ち続けているということは、PayPayの方向性を完全にコントロールできるということです。
vol.2でお伝えしたVisaとの提携も、
vol.5でお伝えした三井住友銀行との連携も、
すべて孫正義さんが「これが最善」と判断して進めていることです。
「使えない店が増えた」と感じていたPayPayが、世界規模の戦略の中でどんどん進化している.
その背景に、今回の話があります。
まとめ
| 疑問 | 答え |
|---|---|
| なぜナスダックを選んだ? | 浮動株10%でOKだから。支配権を9割維持できる |
| 東証ではダメだったの? | 30%放出が必要で、支配権が弱まるから断った |
| 同じことをやった会社は? | アームも2023年に同じ方法でナスダックに上場 |
| 集めたお金の行き先は? | AI企業への投資が中心。孫正義さんのAI帝国構想の一部 |
| 私たちへの影響は? | PayPayの進化が加速する。間接的にプラスの影響あり |
パン屋さんで使えなくて変な汗をかいたあの日から始まったこのシリーズ。
まさかPayPayの上場がAI帝国への布石だったという話まで辿り着くとは思っていませんでした。
「大人のどうして?」を追いかけていくと、世界の大きな動きが見えてくる—そんな気がした今回の記事でした。
次回vol.7「大人のどうして?」をお届けします。お楽しみに!
情報は2026年3月25日時点のものです。
